曖昧な喪失の中で ―福島 増える震災関連自殺

  • 10 年前
NHK ハートネットTV 2014.7.8 

2011年7月、福島県飯舘村のダム湖付近で一人の男性が身を投げて亡くなりました。浪江町から二本松市に避難していた五十崎喜一(いがらし・きいち)さん(当時67歳)でした。妻の栄子(えいこ)さんは、原発事故から自殺に至るまでの喜一さんの足取り、心の動きを、今できる限り思い出そうとしています。原発事故による自殺をなかったことにしてはならないと考えるからです。

内閣府自殺対策推進室による統計「東日本大震災に関連する自殺者数」によれば、福島県の自殺者数は、2011年が10人、12年が13人、13年が23人。同じ被災県、岩手、宮城と比較しても、福島県の増加傾向は顕著です。それはなぜなのでしょうか。

相馬市のクリニックで被災者の診療にあたる精神科医、蟻塚亮二(ありずか・りょうじ)さんは、「原発事故のため、家があるのに帰れない。この曖昧な喪失は人間にとってつらい」と言います。また、「福島いのちの電話」の渡部信一郎(わたなべ・しんいちろう)さんは「震災から時が経つにつれ、問題が深刻化・複雑化している」と実感を語ります。

原発関連の自殺はなぜ起こり、なぜ減らないのでしょうか。五十崎さんのケースを検証し、蟻塚医師とともに考えてゆきます。