1-4「源氏物語」100分で名著
  • 8 日前
100分で名著 紫式部「源氏物語」
今回は、2012年4月に放送され、好評を博した「源氏物語」をアンコール放送します。
源氏物語はこれまで、様々な関連本が出されています。様々なまとめ方があり、登場人物ごとに紹介したり、全体像を図鑑のようにまとめたりしています。しかしあまりにも長い物語であるため、ポイントを絞って要約することがなかなか出来ない作品でもあります。ですので今回は、的確なポイントを設定することに苦心しました。
例えば、光源氏とは一体どういう男なのか?を知りたいと思った場合、本やネットなどで調べると、イケメンでセレブで女を全力で愛することが出来て・・などなどが書かれていますが、何だか分かったような分からないような、非現実的な感じすらしてしまいます。
そこで第1回では「コンプレックスを抱えたさびしい男」としての側面に光をあて、光源氏が、愛に何を求めていたのかを探ることにしました。
源氏物語は、決して甘い恋愛物語ではありません。人生の現実を鋭く描いた、骨太な人間ドラマです。そこで現代に生きる私たちにも共感できる心理描写にスポットを当てて、テーマを絞り込みました。全4回、全て現代性のある切り口を心がけています。
また番組では、テキストの内容をさらに分かりやすくすると共に、テキストにはない情報も数多く取りあげています。最大の見所は、新しく司会を勤める伊集院光さんのテンポ良く鋭い突っ込み。難解な源氏物語がぐっと身近に感じられると思います。お楽しみに!

第1回 光源氏のコンプレックス
【ゲスト講師】
三田村雅子(上智大学文学部教授)
聡明で美しい光源氏は、天皇になるはずの能力と血筋を持った男だった。しかし母の身分が低かったことから源氏という臣下の地位にされてしまう。そのため光源氏は、不遇感から強い上昇志向を持つようになり、それが天皇の后など身分の高い女性との禁断の恋に結びついていく。第1回では、光源氏のコンプレックスにスポットをあてる。さらに、単なる恋物語ではなく、政治小説としての側面も解説、源氏物語の全体像を明らかにする。

第2回 あきらめる女 あきらめない女
【ゲスト講師】
三田村雅子(上智大学文学部教授)
源氏物語には様々なタイプの女性が登場する。年上インテリ女性が抱える苦悩が描かれた六条御息所。愛されながらも子供がない悲しさを感じる紫の上。晩年には母親としての幸せを手に入れる明石の君。男から愛されることを選ぶか、それとも母として生きることを選ぶか。物語の女たちは、悩みながら生きる。人生、全てを手に入れることはできず、何かをあきらめなくてはならない・・。第2回では、女にとっての、あきらめの意味を探っていく。

第3回 体面に縛られる男たち
【ゲスト講師】
三田村雅子(上智大学文学部教授)
【特別ゲスト】
林望(作家)
人生の後半、光源氏は政治の表舞台で栄華を極める。しかしこのあたりから光源氏にも老いが目立ち始め、若いときと違って、女を自由に出来なくなる。新たに迎えた妻・女三の宮は、源氏よりも若い柏木の子を宿してしまい、ひそかに思いを寄せていた玉鬘も寝取られ、長年連れ添った紫の上までもが別れたいと言い出す。第3回では光源氏の晩年を描く。そして世間的な体面を気にしながらも、女に執着する男の未練と弱さを見つめていく。

第4回 夢を見られない若者たち
【ゲスト講師】
三田村雅子(上智大学文学部教授)
【特別ゲスト】
香山リカ(精神科医)
光源氏の死後、物語はその息子や孫たちが主人公となる。彼らは、幼いころから恵まれた環境に育った。そのため父と異なり、野心を持つことが出来ず、生きる強さに欠けていた。女を全力で愛することが出来ない男の恋は、互いのすれ違いを生み、新たな悲劇へと発展してしまう。最終回では「宇治十帖」を中心に、夢見ることを忘れてしまった草食系男子たちの心の奥底を見つめるとともに、現代の恋愛事情との共通点を探っていく。