海よ…よみがえれ!ニッポン式の挑戦:ガイアの夜明け

  • 8 か月前
ガイアの夜明け
「海よ…よみがえれ!ニッポン式の挑戦」
2023年8月18日 放送 第1077回

海と共に生きてきた島国ニッポン。気候変動や海洋プラスチックごみなど、世界的な課題に挑み、海をよみがえらせようと闘う人々がいる。岡山県倉敷市の「海洋建設」が取り組むのは、廃棄される貝殻を使った「魚礁」。気候変動や乱獲などの影響で漁獲量が減少、危機に瀕する漁師たちを救えるか?一方、海に流出するプラスチックごみが、意外な場所から発生していた。それは、「田んぼ」。一体なぜ?この難問に、若者たちが立ち上がった。

■漁獲量過去最低 水産大国ニッポンの危機 救世主現る!?
瀬戸内海に浮かぶ山口県・周防大島。4月上旬、沿岸部に1隻の作業船が。これから海に20基の巨大構造物(縦横2.6m、高さ1.4m、重さ6.3t)を沈めるというが…。実はこれ、魚の住処になる「魚礁」と言われるもの。海底に設置後、藻やプランクトンが付き始め、餌場や産卵場を求めて、魚が集まってくるという。それにしてもなぜ、こんな大掛かりなことまでして、魚を呼び込もうとしているのか―。近年、気候変動に伴う海水温の上昇や乱獲などの影響で漁獲量が激減。ピークだった40年前に比べて、3分の1程度にまで落ち込み、過去最低を更新している。水産大国ニッポンの危機。魚礁は今、その救世主として大きな注目を集めているのだ。

■廃棄貝殻を再利用した「魚礁」 全国に1万6000基超 メキシコで新たな挑戦
山口県・周防大島の魚礁を手掛けたのは岡山県倉敷市の海洋建設。社長の片山真基さんは新たな魚礁の製作現場へ向かった。やってきたのは愛媛県愛南町。県内屈指のカキの産地だが、一方で悪臭が漂ったり、景観を損ねたりと貝殻の廃棄が長年、悩みの種だった。海洋建設ではこうした産地の漁業者と連携して、廃棄貝殻を再利用して魚礁を製作している。「コンクリート製の魚礁に比べて魚の寄り付きが断然いい」(片山さん)。創業から40年、実績を積み上げ、今や35の都道府県に1万6000基以上が設置されるまでになった。こうした中、同じく貝殻の廃棄と漁獲量の減少に悩む地域が―。それは日本から遠く離れた中米・メキシコ。魚礁ビジネスをゼロから立ち上げようと奮闘する片山さん。しかし、そこにはとんでもない落とし穴が待ち受けていた。

■稲作肥料からのプラスチック流出を防ぐ
海岸の漂着物に混じる2ミリほどの白い粒。実はこれは稲作で使われる肥料を覆うプラスチックの殻。現在稲作で主に使われている肥料は、一粒一粒がプラスチックの殻に覆われ、水分が浸透すると殻が破れて徐々に成分が溶け出す仕組みになっている。春に撒けば、その後追肥する必要がないため、高齢化が進む農家には重宝されている。しかし近年、プラスチックごみによる海洋汚染への関心の高まりを受け、肥料成分が抜けきった後のプラスチックの殻が分解されないまま水田から川や海へ流出していたことが問題視されるようになっている。JA全農、全国複合肥料工業会、日本肥料アンモニア協会の業界3団体は、「2030年までにプラ被覆肥料に頼らない農業の実現」を目標に掲げているが、代替肥料の開発、普及にはまだまだ時間を要する。そんな中、熊本県を拠点に活動するSUSTAINABLE JAPAN代表の東濱孝明さんは、独自で開発したプラスチックの回収装置の普及を目指す。また宮城県農業高校では、山根正博教諭を中心に生徒たちが、代替肥料の開発に取り組んでいる。

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